ビジネスの世界では、VUCAの時代と言われ続けて既に10年以上経過しています。因みに、VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組合せた言葉です。
会社を取り巻く社内外の環境を認識した場合、基本的に変動的で不確実で複雑で曖昧といえます。逆に、経営環境が安定的で確実で単純で明確だった時期はあるのでしょうか。例えばこの30年間を振り返れば予想を超えた次のようなイベントが生じています。
・バブル崩壊(1991年~)
・阪神淡路大震災(1995年)
・リーマンショック(2008年)
・東日本大震災(2011年)
・新型コロナウイルス感染症の流行(2019年~)
これらのイベントをどれだけの人が予測したでしょうか。ほぼ皆無かと思います。なお、これらのイベント発生後には、国の方針・指導・政策により経営環境を安定化させる方向に動いています。
しかし、変化はこれだけではありません。
・人口減少と人口構成の変化(内需の減少、働き手の減少・高齢化)
・ICT技術革新・発展に伴うネットワーク社会の醸成(情報受発信・コミュニケーション・価値観の多様化)
・日本の相対的地位の低下(低い付加価値、低い人件費、稼げない労働者)
これらの変化は組織(内部環境)に大きな影響を及ぼすものです。
人口減少は内需を減少させます。人口構成の変化は、労働者の減少もしくは高齢化により生産量の減少や生産性の低下につながります。
ネットワーク社会の醸成により、様々なコミュニケーション方法や価値観が多様化するため、従来のやり方が通じなくなってきます。また、価値観の多様化によりニーズやウォンツも多様化します。そしてネットワーク社会は、地理的な隔たりが薄くなるため競争が厳しくなります。
デフレ経済が続いた我が国日本は、いつの間にか稼げない国となっています。特に、付加価値が低い事業のため、人件費を低くしなければならない場合は、事業を継続することできなくなります。
近年になってこれまでのやり方や過去の経験が通用しない問題や課題が生じているのか、という問いの答えはここにあります。内部環境の変化に対応していないため、ということです。具体的には、ビジネスモデルや価値創造プロセス、組織運営の仕組み及び組織メンバーの意識をこうした内部環境の変化に影響を及ぼしていることを認識し、適合させていくことができていないからです。これはトップマネジメント上の大きな課題と考えます。